R3年4月は、R2年8月「廃用症候群」をおさらいし、さらに学びました。
廃用症候群は「生活不活発病」とも呼ばれます。
病気やケガが原因で安静状態が長引いたり、高齢による関節の痛みなどで運動量が減ることで廃用症候群は発症します。
似たような症状にロコモティブシンドローム(運動器症候群)がありますが、廃用症候群は心身の能力が大幅に低下することで、さまざまな症候が起こります。
(運動器障害)
体を動かさないことによって起こる「筋萎縮」
関節付近の組織の短縮、炎症により関節の可動範囲が限られてしまう「関節委縮」
加齢とともに骨が細くなる(骨量が減る)ことによって起こる「骨委縮」
体を動かす機会が減ることによって、食事量が減り、たんぱく質やカルシウムなどを摂取する
栄養が減ることも原因の一つです。
(循環・呼吸器障害)
寝たきり状態によって副交感神経の活動が停滞し、心拍数の低下とともに低血圧や意識障害が
みられるようになります。
血流の低下によって血栓ができる「血栓塞栓症」
呼吸筋の衰えにより肺活量、換気量も減少します。
長期間上半身を起こさないでいると、重力によって細気管支に粘液が溜まりやすくなり、細菌感染を
引き起こします。これは「誤嚥性肺炎」とも深く関係しています。
(自律神経・精神障害)
体に自由が利かなくなることによって、気持ちがふさぎこむようになり、「うつ」状態になります。
気分が落ち込めば、運動や食事に対する意欲も失われてしまいます。
周囲はなるべく本人とコミュニケーションを取るように心がけ、リハビリに向けて気持ちが前向きに
なるよう、励ますことが大切です。
(床ずれ)
特に寝たきりの状態で注意したいのが褥瘡(床ずれ)です。
高齢者の場合、筋肉の衰えによって、骨と皮膚に与える負荷が大きくなります。
体に見合ったマットレスや寝具を選ぶと同時に、定期的な体位変換で防ぐことが可能です。
またシーツにしわを作らない、パジャマと下着のゴムやボタンが肌に食い込まないようにするなどの
配慮も必要です。
・予防するには体を動かすことと食事が大切
安静にしているときでも「体位変換」「座位を増やす」「ベッドに寝たまま足首を回す」
「足の指を動かす」「手足をもみほぐす」も良い運動となります。
介護者がつきっきりで身の回りの世話までやってしまうと廃用症候群のリスクが高まるので、自分で
できることは極力自力でおこなうよう促すことで運動機会を増加できます。
ほかにも、固まった筋肉をマッサージなどでほぐし、血流を促してあげることも効果的です。
軽めに運動やヨガ、ストレッチのような「柔軟運動」も固まった筋肉をほぐしてくれるのでおすすめ
です。
体を動かす意欲を湧かせるためにも主食・主菜・副菜を基本に栄養バランスの整った食事、とくに筋肉
の材料となるたんぱく質を豊富に含む食品(肉類、大豆類、乳製品など)を摂るとよいでしょう。
廃用症候群のリハビリのポイント
・本人を前向きな気持ちにする
「何のためにリハビリをするのか?」「リハビリをするとどのような変化が期待できるのか?」といった
リハビリのゴールをしっかり伝え、本人のやる気を引き出すことがポイントです。本人が気乗りしない
ときは無理強いせず、医師や看護師、理学療法士、作業療法士などに相談し、家族以外からも本人に働
きかけてもらうなど、十分注意を払いましょう。
・リハビリしやすい環境を整える
「睡眠時間をしっかり取れているか?」「食事はきちんと取れているか?」など、リハビリするのにふさ
わしい体調かどうかを事前に確認しましょう。
普段寝ているベッドのマットレスの硬さもチェックポイントです。
マットレスが柔らかすぎると、身体をさらに動かしにくくなるおそれがあります。
それぞれの状態に合わせ、マットレスの硬さの見直しを行いましょう。
ベッドのリクライニング機能を活用して、座位姿勢を取らせるなど、いろいろな方法で身体を動かす
ように促すことが大切です。
また、状態を注意深く観察しながら、可能な限り車椅子ではなく、杖や歩行器の使用を促すこともリハ
ビリの一環として重要です。
・栄養管理に配慮する
リハビリの前に、リハビリに必要と考えられるエネルギー量を摂取できているかどうかを確認しましょ
う。一日に必要な摂取カロリーに加えて、リハビリの運動量に応じたカロリーを摂取する必要があるた
め、医師のアドバイスを聞きながら行ってください。
(研修まとめ)
病気やケガで長期入院して安静にすることで、全身の筋肉をあまり動かさない状態が長期間続くと、
筋肉や関節、臓器の運動能力が低下します。また自分で動いたり歩いたりできるうちから、車いすや
おむつを使用するとさらに身体を動かす機会が減ります。
そういう状態が続くと身体機能は低下する一方になり、廃用症候群を進行させます。
健康なうちに予防するスタンスも大切であり、身体が動くうちに筋力を維持向上させることが予防に
なるということを学びました。