スタッフ研修R2年9月『ボクはやっと「認知症」のことがわかった』

R2年9月は、認知症医療の第一人者である医師の長谷川和夫先生が自身が認知症となったことで伝えたいことを学びました。

 

認知症研究の第一人者で「長谷川式簡易知能評価スケール」の開発者をしても知られる長谷川和夫先生が2017年に認知症であると自覚し公表された。

自身が認知症になってみて実感したことは、一旦発症したら固定されたままだと思われがちだがそうではないということ。

たとえば先生の場合、朝起きた時は調子が良い。段々と疲れてきて夕方になると混乱がひどくなる。

でも一晩眠るとすっきりして、またフレッシュな新しい自分が甦る。

その時々の身体や心の具合によって、よくも悪くもなる。

だから「一度なってしまったらおしまい」、「何もわからない人になった」などと思わないでほしい。特別扱いしないでほしい。

 

認知症の本質は「暮らしの障害」

当たり前にできていた「普通の暮らし」が出来なくなっていくのが特徴。

不便で困るし、家族も困惑するけれども、周囲の接し方次第で障害の程度がずいぶん軽減できることも知ってもらいたい。

 

「置いてきぼりにしないで」

認知症と診断された人は「あちら側の人間」として扱われがち。

あちら側の人間はまともに話ができないとか、何を言ってもわからないと、認知症の人の前で、平気でそうしたことを口にし、人格を傷つけるようなことが話されている場合もある。でもそれは間違いです。

話していることは認知症の人にも聞こえているし、悪口を言われたり、馬鹿にされた時の嫌な思いや感情は深く残ります。

だから、話をする時には注意を払ってもらいたい。

認知症の人が何も言わないのは、必ずしもわかっていないのでない。

存在を無視されたり、軽く扱われた時の悲しみや切なさは誰もが大人になる過程で、大人になってからも職場や家庭で体験しているもの。

そうした辛い体験がもたらす苦痛や悲しみは認知症でなくても同じ。

何かを決める時は勝手に物事を決めないでほしい。

置いてきぼりにしないでほしいと思う。

 

「時間を差し上げる」

相手の言うことをよく聴いてほしい。

認知症の人と接するときに「こうしましょうね」、「こうしたらいかがですか」と自分からどんどん話を進めてしまう人がいる。

そうすると、認知症の人は戸惑い、混乱して自分の思っていたことが言えなくなってしまう。

「今日は何をなさりたいですか」、「今日は何をなさりたくないですか」と聞いてほしい。

その人が話すまで待ち、何を言うか注意深く聴いてほしい。

「聴く」というのは「待つ」ということ。

「待つ」というのは、その人に自分の「時間を差し上げる」こと。

認知症は本人が相当不便でもどかしく、耐えなくてはいけないところがあるので、待ってじっくり向き合ってくれると安心できます。

 

「役割を奪わない」

認知症の人も自分と同じ「一人の人間」であり、唯一無二の存在と心に留めてほしい。

生活環境をシンプルに。トイレや寝る場所の位置や大事なものほど、覚えやすく、見えやすい、動きやすいようにしておくことが大事。

認知症の人は同時にいくつものことを理解することが苦手。

一度に色々なことを言われると、混乱して疲れの度合いが深まる。

シンプルにわかりやすく、一つずつにしてほしい。

「支えられる人」にせず、その人の得意なことを役割として担っていただく。

得意分野だと頼みやすいし、引き受けてもらいやすい。

そして褒めることを忘れないでほしい。

 

「笑いの大切さ」

暮らしの中で笑いを大切にしてほしい。

笑っていれば、大しておかしくなくても何となく心がほぐれてくる。

認知症になり、辛い感情が続く時は特に笑いが大切。

認知症の人と接する時は笑いを忘れないでほしい。

 

(研修まとめ)

今までは認知症に自分がなったら、何もわからない人になると思ったが、認知症になるのは時別なことではない。

誰もが向き合うもので怖がる必要はない。

固定ではない、変動するものだと先生は言われた。

今、この仕事をしていくことで大事であることは、相手のいうことを聴く。

 

自分から話していくのではなく、待って向き合って相手に時間を差し上げることが相手は安心するのだと気付かされました。