R1年9月は「クレームを発生させない」ことについて学びました。
「クレーム」が起きてしまうのはなぜか?
利用者とその家族は訪問介護サービスを利用するにあたり、「これで安心して在宅生活が続け
られる」「やっと親の介護が楽になる」など、様々な期待をしています。
そのサービス内容が期待値を上回れば満足、下回れば不満となり、不満が積もればクレームに
つながります。
しかし、たとえミスやトラブルが起こっても事業所が適切に対応すれば信用を失うことはあり
ません。
しかし、①納得のいく説明がない ②対応が遅い ③改善されない
となると、利用者の不満は増大し、深刻な事態=クレームに発展する可能性があります。
訪問介護サービスの契約打ち切り、さらには訴訟へ発展し、損害賠償を求められる事態にもな
りかねません。
そのような事態を避けるためにまずどう防ぐか対策を立てること、どのような対応をすれば
クレームが軽減し、次の進歩につなげられるのか考えていきましょう。
クレームを発生させない4つのポイント
①利用者を知る
利用者の希望・性格・抱えている問題・家族のホームヘルパーへの希望等、十分な情報が
あればサービスを行う際に気をつけなければいけないことが自然と見えてきます。
・掃除……掃除用具・収納場所を把握する
掃除の仕方も各家庭で変わる為、確認が必要
・調理……利用者の好み(薄味か濃い味か、洋風か和風か)
利用者の健康状態(糖分・塩分・油分を控える、生野菜は避けて火を通す、
嚥下力、咀嚼力の低下などへの配慮)
・買い物…買う品物(メーカー、量、仕様など)
買う店(〇〇スーパー、△△精肉店など)
買い置きの有無
例)ラップや洗剤が何本もあるのに「買ってきて」と頼まれた場合、「買い置きが
まだ〇本ありますよ」と伝えた方が親切
②プロ意識を持つ
どんな人間にも得意・不得意はあるもの。お金をいただいている以上、苦手・自信がない
では通らないので、プロとしての心構えを持ち、意識の向上が必要。
・何ごとにも丁寧に…隅々まできれいに。使った物、動かした物はきちんと元に戻す。
・物は大切に扱う……物を扱うときも利用者と思って大切に。
家電や家具も経年劣化していることを念頭に。扉の開閉はゆっくりと。
・苦手なことをなくす…苦手な食材や初めてでも、一般的なものは調理できるように。
・身体介助に自信を持つ…十分なトレーニングを積む
③ヒヤリ・ハットから学ぶ
利用者へのサービス提供中にヒヤリとしたり、ハッとした経験はあるはず。
この「ヒヤリ・ハット」こそ大切な警告なのです。
たとえば、ベッドから車椅子への移乗の際、利用者が床に落ちそうになったり、腕を支えながら
歩いていて利用者が転びそうになったり、このような事例を現場から集め、研修に生かせば
トラブルを未然に防ぐ予防策となります。
④危険を予測する
介護する側が若ければ若いほど、健康で体もよく動き、よく見え、よく聞こえるため、年を
取ることがどういうことか、生活環境の中で何が危険なのか、何が障害となるのかピンとこ
ないのも無理ありません。
若くて健康な人には想像もつかないような危険が利用者の周りに潜んでいることを知ってお
きましょう。
予測例
①引き出しに体がぶつかる→引き出しが落ちる
②開いているレンジの扉を思わずつかんでしまう→電子レンジが落ちる
③はみ出している包丁の柄に体が触れる→包丁が落ちる
④床の上のレジ袋を踏む→滑ってひっくり返る
⑤床の上のサラダ油のボトルにつまずく→転倒し、サラダ油がこぼれる
⑥コードに足を引っかける→電気ポットがひっくり返り、お湯がこぼれる
【浴室】石けんの泡で覆われた浴室の床→滑って転倒する
深くて手すりのない浴槽→立ち上がれず出られなくなる
【廊下】薄暗い廊下→段差がよく見えずつまずく
【居室】背もたれのない椅子→後ろにひっくり返る
クレームを深刻化させないために
①クレームに対して受容・共感する
利用者からクレームを受けたら、相手の訴えをよく聞くことが最も重要です。
「傾聴」「受容」「共感」は介護の基本姿勢。最後まで相手の話を聞き、相手の思いを受けと
め、どのような苦痛や不快を味わっているのか想像してみる。
②3つの異なる立場で考えてみる
・自分が相手だったらどう思うか
・自分が同じことをされたらどう思うか
・自分が第三者の立場で見ていたらどう思うか
これら3つの立場で考える習慣をつけることで、どのような対応が必要か想像しやすくなる。
訪問介護現場で出てくるさまざまな苦情に適切に対応すれば、大きなクレームに発展すること
もない。
さらに利用者からの苦情には、ホームヘルパーのスキルや意識を向上させるためのチャンス、
事業所の体制を見直すヒントも多々含まれている。