スタッフ研修H31年2月「感染症対策の基本」

H31年2月は、「感染症対策の基本」を確認しました。

      感染症には、次の①~③あります。

  ①空気感染(結核、麻疹等)

  ②飛沫感染(インフルエンザ等)

     ③接触感染(ノロウィルス、MRSA、疥癬等)

 

接触感染の可能性のある汚染箇所として、

ドアノブ、階段等のてすり、水道の蛇口、机やイス、引き出しの取っ手、車いすの押し手、ベッド周り 等が挙げられます。

 

飛沫感染防止のために、マスク着用やハンカチやタオルを当てて、咳エチケットを守る必要があります。

 

具体的に、ノロウィルスによる感染症について見ていきます。

 ノロウィルスとは、感染性胃腸炎の原因となるウィルスであり、冬に多発します。

 100個以下の少量で人に感染し、腸管内でウィルスが増殖します。

 患者の糞便や嘔吐物には100万から10億個/1gのウィルスが含まれます。

 

主な感染経路

①人の糞便中のノロウィルスが下水を経て川、海に運ばれ、二枚貝に蓄積され、その二枚貝を十分に加熱せず食べて感染します。

②ノロウィルスに感染した人の手から、十分に手洗いを行わずに調理すると食品が汚染され、その食品を食べた人が感染します。

③ノロウィルス患者の糞便や嘔吐物を処理した人の手から、または不適切に消毒処理して残ったウィルスから、口に取り込まれて感染します。

 

ノロウィルスに感染した時の症状

感染後24~48時間で、下痢、吐気、嘔吐、腹痛、発熱等の症状が現れます。通常3日以内に回復しますが、ウィルスは感染から約1週間糞便中に排出されます。

ノロウィルスに感染した人の入浴は、最後に浴槽に入るかシャワーのみにします。

 

消毒方法

①85℃1分以上の加熱が必要です。

②塩素系漂白剤が有効です。(逆性石鹸やアルコールは効果が不十分)

 

感染予防の基本は、正しい手洗いです。

手洗いの手順

①石鹸をつけ、手の平をよくこすります。

②手の甲を伸ばすようにこすります。

③指先、爪の間を念入りにこすります。

④指の間を洗います。

⑤親指と手の平をねじり洗いします。

⑥手首も忘れすに洗います。

⑦流水で十分に洗い流し、ペーパータオルか個人用タオルでよく拭き取って乾かします。

注意点:水道の蛇口も石鹸であらい、ペーパータオルを利用して水道の蛇口を締める。

    タオルを共用しない。

 

嘔吐物・糞便の正しい処理方法

・・・ノロウィルス処理用セット・・・

バケツ、塩素系漂白剤、ビニールまたはゴム手袋、マスク、白衣やエプロン、

ビニール袋、拭き取るための布や紙等

 

①処理する人は手袋、マスク、エプロンを着用します。

②汚物(嘔吐物、糞便)は布やペーパータオル等で外側から内側に向けて、

汚れた面を折り込みながら静かにぬぐい取ります。

③使用した布やペーパータオル等は0.1%次亜塩素酸ナトリウムを

少し入れたビニール袋に密封して消毒します。

④汚物が付着した床とその周囲を0.1%次亜塩素酸ナトリウムを染み込ませた布やペーパータオル等で約10分覆うか浸すようにふきとり、後で水拭きします。

スチームアイロン等で85℃1分間以上の高温処理する方法もあります。

⑤使用した着衣は廃棄が望ましいですが、消毒して洗濯する場合、

専用のビニール袋に入れて、0.02%次亜塩素酸ナトリウムに30~60分浸漬、

または85℃1分間以上熱湯消毒します。次に他のものと分けて最後に洗濯します。

⑥手袋は外側に触れないように裏返して外し、④と同様ビニール袋に密封し処分します。

 

家庭用塩素系漂白剤(約5%  キャップ1杯約25cc)の希釈方法

①10倍(キャップ2杯50ccを500mLペットボトルに溶かす)・嘔吐物や便    

②50倍(キャップ2杯50ccを500mL5本分をバケツで溶かす)・衣類、風呂場や洗い場

 

③250倍(キャップ1/2杯弱10cc1を500mL5本分をバケツで溶かす)・取手、ドアノブ、蛇口

 

留意点

処理中及びその後は、部屋の窓を大きく開けて、換気扇があれば運転します。

下痢している人がいればトイレのドアノブも消毒します。

可能であれば、汚物処理後に、処理した人はシャワーを浴びます。

 

日頃から心がけることは、

健康管理に十分注意します。

配膳時、エプロンと帽子を着用、手洗いを念入りに行います。

調理では十分(中心温度85℃1分以上)に加熱します。

施設内外への感染の持ち込み防止と持ち出し防止のため、

制服は更衣室で着替えます(着て来ない・着て帰らない)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

施設において、感染症や食中毒が発生したら、感染の拡大防止のために対策をとります。

①発生状況の把握

 

症状(下痢、嘔吐、発熱、その他の症状)の確認をします。

(担当職員も含めた)日時別、棟別、部屋別の発症状況の把握します。

医療機関への受診状況、診断名、検査結果、治療内容の確認をします。

普段の有症者数(下痢、嘔吐等の胃腸症状、発熱等)と比較します。

②感染拡大の防止

職員に発生状況を周知させ。対応の徹底を図ります。

感染拡大防止として、手洗い、排泄物と嘔吐物の消毒処理の徹底、施設内の消毒頻度を増やす、感染症発生時に対応した施設ない消毒を実施します。

③関係機関等への連絡

施設菅理医師への連絡:重篤化防止のため適切な医療及び指示を受けます。

利用者家族への連絡:発生状況の説明、健康調査や二次感染予防への協力を依頼します。

保健所、市町村等の社会福祉施設等主管部へ報告して対応について指示を受けます。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

エプロンやガウンの着用

血液や体液等の湿性生体物質への皮膚・衣服への接触・飛沫が予想される場合

 

エプロン:体幹のみの汚染

ガウン:体幹前腕上肢の汚染が考えられる、抗悪性腫瘍治療薬ミキシング時

    高レベル消毒薬の取扱時

 

患者毎に交換します。

体液で汚染され感染隔離室で使用されたエプロンやガウンは、

感染性廃棄物として処理します。

 

プラスチックエプロンの着脱の注意点

①着用時、折り目(谷折り)が患者側に来るように首の部分をもってそっとかぶります。

 両端をもってゆっくり下へ広げますが、エプロンの内側に触れないように注意します。

②外す際は、外側の汚染面に触れないように両端を持ちながら三つ折りにくるみ廃棄します。最後に手洗いします。

 

 

マスクの着用

 血液や体液等の湿性生体物質の飛沫により、鼻腔や口腔が曝露すると予想される場合

職員自身が咳、くしゃみ、鼻汁などの呼吸器症状を有する場合マスクを着用して、

感冒等感染症に罹患している可能性がある場合管理者に報告して指示を得ます。

 

マスクの着用方法             マスクの外し方  

①ノーズクリップを鼻の形に合わせる    ①汚染面に触れないよう紐をもって外す

②プリーツを伸ばし顎の下までカバーする  ②そのまま捨てる

 

注意点

マスクは一回使い切り                      

体液で汚染されたマスクや感染隔離室で使用されたマスクは感染性廃棄物として処理します

 

 

ゴーグル・フェイスシールド付きマスクの着用

血液や体液等の湿性生体物質の顔面への飛沫が予想される場合

眼への薬液曝露防止のため抗悪性腫瘍治療薬のミキシング等、高レベル消毒薬の取扱時

眼が湿性生体物質に曝露した場合直ちに水道水で洗浄します。

 

着用手順            外す手順      

①ガウン/エプロン       ①手袋

②サージカルマスク       ②ゴーグル/フェイスシールド

③ゴーグル/フェイスシールド     ③ガウン/エプロン 

④手袋              ④サージカルマスク 

 

 

今月は、ノロウィルス感染と感染時の正しい対処方法について確認しました。

ノロウィルスは逆性石鹸やアルコールでなく、塩素系漂白剤(次亜塩素酸ナトリウム)で消毒します。また嘔吐物・糞便の正しい拭き取りと処理が行われていないと、乾燥した後、ウィルスが室内に拡散・感染の拡大となる恐れがあります。したがって適切に消毒処理を行い、窓を開けたり換気扇を運転したりして十分な換気を行うことが大切です。

職員保護のため、エプロン・ガウン・マスク・ゴーグル・フェイスシールド付きマスク等がありますが、間違った使用方法では保護の効果はありません。

全てのスタッフがノロウィルスの消毒・処理方法や保護具の使用方法を正しく理解して、実務において実践できるよう、定期的に研修していきたいと思います。   妹尾昭美